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2012年5月 2日 (水)

是非読んで頂きたい朝日新聞記事より その5

第5回は、ポール・クルーグマンの「クルーグマンコラム@NYタイムズ」より。

米国の抗議運動 過剰に反撃する金持ち守護者

「ウォール街を占拠しよう」という運動が、米国を方向転換させるかどうか、まだよく見極めなければならない。

 だが、この抗議運動はすでに、ウォール街から猛烈にヒステリックな反応を引き出した。概して超富裕層からの反応だが、全国民の0.01%ほどのこの層の利益に奉仕している政治家、有識者からの反応もある。

 そしてこの反応は、重要なことを示してくれる。つまり、米国民の価値観を脅かしている過激論者は(1930年代の大恐慌のさなかに大統領になった)ルーズベルト氏が「経済的王党派」と呼んだ人々であり、(ウォール街の)公園に集まっている人たちではないということだ。

 まずは、次第に大きくなっているとはいえ、まだ中規模な運動について、共和党の政治家たちがいかに誇張したかを考えてみよう。

 カンター下院院内総務は「暴徒」「米国人同士の対立をあおるもの」と非難した。大統領選に挑む共和党候補者たちも、批判に加わった。ロムニー候補は、抗議者たちを「階級闘争」を仕かけるとして糾弾。ケイン候補は「反米国人」と呼ぶ。

 ニューヨークのブルームバーグ市長は、自分で身を起こした金融界の大物だからか、もう少しおだやかな言い方だ。それでも抗議者たちを「この街で働く人々から仕事を奪おうとしている」と、声明の中で批判した。ただ、市長が指摘する内容は、抗議運動がめざすものとは異なっている。

 CNBCテレビの論者の話を聞いていると、抗議者たちは「異端の旗をはためかせ」たり、「(ロシア革命の指導者)レーニンのもとに結集」したりしているように聞こえただろう。

 こうした一連の反応を理解するために、この反応がより広範囲に広がっている症状の一部だと認識しておこう。つまり、金持ちに有利なシステムからもうけている富裕層は、このシステムの不正さを指摘する人に対し、ヒステリックに反応する、という症状が広がっているのである。

 オバマ大統領が昨年、非常におだやかに金融界を批判したところ、大物たちが過剰反応したことがあった。彼らは、大統領がいわゆる「ボルカー・ルール」を支持した際、大統領がほとんど社会主義者であるかのような言い方で非難した。しかし、(米連邦準備制度理事会議長も務めたボルカー氏が主導した)ルールというのは、政府保証を受けている銀行が、危険性の高い投機に関与してはならない、としたものに過ぎない。

 そして、複数の銀行があまりにも少なめの税金しか払わずにすむ、という抜け穴を埋める提案について、(投資ファンド運用会社の)ブラックストーン・グループを率いるシュワルツマン会長はなんと、(ドイツの独裁者だった)ヒトラーのポーランド侵攻になぞらえたのである。

 また、金融制度改革に尽力し、現在はマサチューセッツ州選出の上院議員選に立候補しているエリザベス・ウォーレン氏に対しては、誹謗(ひぼう)中傷キャンペーンがあった。氏は、富裕層への課税について能弁に、現実的に主張をしていた。それを映したビデオが最近、動画サイト「ユーチューブ」に投稿され、急速に広まっっていったのだ。

 ウォーレン氏が主張したことは、なにも過激なものではない。「税金は、文明社会への対価である」というオリバー・ホームズ(20世紀の最高裁裁判官)が残した有名な格言を、現代風に言い換えただけのものだった。

 だが、金持ちの守護者たちの言うことを聞いていると、ウォーレン氏は(ロシア革命の指導者)トロツキーの再来かと思ってしまうだろう。(保守派のジャーナリスト)ジョージ・ウィル氏は、ウォーレン氏について「(中央集権的な統制の必要性を強調する)集産主義者」「個人主義は幻想だと思い込んでいる」などと言い放った。

 (ラジオトーク番組で司会を務める保守派の)ラッシュ・リンボー氏も「寄生先を嫌う寄生虫だ。寄生先から命を吸いとり、寄生先を破壊してしまうようなヤツ」と言った。

 いったいどうなっているんだろう。答えはこうだ。ウォール街の悪役ヒーローたちは、倫理的に自分たちの地位を正当化できないことを悟ったのだ。彼らは、複雑な金融商品を売り歩くことで金持ちになったような人たちだ。そしてこの金融商品は、米国の人々に利益を分配するどころか、危機に陥れた。まさにこの金融危機の余波が、何千万人もの市民の生活を苦しめ続けている。

 それでも彼らはなんの代償も払っていない。金融機関はほとんど無条件に、納税者によって救済された。彼らは陰に陽に、政府保証から利益を受け続けている。何百万ドル(何億円)という所得の人が、中所得者よりも税の負担率が軽いというような「抜け穴」によってもうけている。

 彼らは厳格な審査があってはならない、と思っている。明白な事実を指摘する人は、だれであれ、またどんなに冷静におだやかに指摘しようとも、悪者扱いされ、舞台から引きずり降ろされるのだ。

 ほんとうは、だれが反米国人なのか。ただ単に声を聞いてもらおうとしている(ウォール街の)抗議者たちではない。真に過激な人たちは、富の源泉に対するどんな批判をも抑圧しようとする、米国の独裁者たちである。(NYタイムズ10月10日付)

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